平成１４年４月２４日 その日 茨城県北部地方には 波浪注意報が 発令されていた
これは ウネリや底荒れに挑み カレイ釣りに命を賭けた 男の ドラマである
♪風の中の昴〜 砂の中の銀河〜 みんな何処へ行った〜・・・・・・・・♪
１０時５分 釣具屋に 男の 姿があった
「太いのしかないんスけど、いいっすか？」
・・・・・暗雲が 垂れ込めた
男は 心の中で 叫んだ 「太ではダメだ！ 中太でなくては！」
・・・すでに 逆境の中に 居た
日立港新堤防・・・
ここでは過去に 数々のカレイ名勝負が 繰りひろげられていた
男は 自己記録更新と ５０ｃｍオーバーを目指して ここへ やって来た
待ち受けていたのは 港内まで入ってくるウネリと 底荒れによる大量の 海藻だった
男が 渾身の力で ２７号海草天秤を 投げた
しかし あっという間に 港奥へ流されてしまう
毎回の 重い手ごたえも すべて 海藻だった
・・・万策尽きた
男は 弱気になっていた
「海藻の写真でも撮って ＨＰの お茶を濁そうか」
そこまで 男は 追い詰められていた
何時頃だっただろう ちょい投げ竿に アタリが 出た
元気な魚だ ウミタナゴか？
上がって来たのは 男にとって 初めての 黒鯛（チンチン）２１ｃｍだった
「これでＨＰのネタが出来た！」 男は胸を撫で下ろすと同時に
「このままで終わって良いのか！？」 と 自分を 責めた
陽も西にかたむき 堤防上には 誰も 居ない
持ち込んだ イソメも 底を 尽きた
最後の1投
男は これに賭けた
数分後 ６０ｍ先から はっきりしたアタリが 出た
男の脳裏に 故郷に残してきた 妻子の顔が 浮かんだ
「今日は カレイの煮付けを 食べさせてやれる」
男は 慎重にリールを 巻いた
途中・・ ふっと 軽くなった
男の心の中に 幾度となく苦汁を舐めた あの 魚の姿が 浮かんだ
その姿を 吹っ切るように 無心に リールを巻いた
ついに 魚は 現れた・・・
「・・・・・長い」
・・・男の額に また１本 人生の シワが 刻まれた
♪風の中の昴〜 砂の中の銀河〜 みんな何処へ行った〜・・・・・・・・♪
次週は、「カレイ釣りに命を賭けた男 後編」を、お送りいたします。（あるか、そんなもん！）
２１ｃｍ リリースしましたよ、もちろん
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